馬鹿になった気がしてくるよ並んでいると

行列に並ぶのが苦手です。
並んでまで食べたいと思えるものなんてあまりないし、遊園地なんぞでも並ぶくらいならホラいっといでと送りだしベンチに座りアイスクリームなど舐めたい。

何が嫌って、なんというか行列に並んでいるとドンドン馬鹿になっていくような気分になる。抑、減る程頭は良くないのだけれど何だか長時間並んでいると、どんどん何も考えなくなるというか、感情もどんどん死んでいって、徐々に発言も片言というか片仮名みたいな感じになってオナカスイタヨ、オシッコモレチャウナアとかそんな感じで、そんな胡乱な奴が美味しく食事を、はたまた十全にアトラクションを、楽しめるとは到底思えない。


まあそれでも、並ぶ時間が並んだ末に得られる喜びと対等ならやはり苦手でも並ぶ。


先日も、本当に久方ぶりに数時間行列に並んだ。


誰かと一緒に並んでいるならtalkingで時間は潰せるけれど、ひとりで並んでいるとそれはもう禅みたいなもんで、修行である。
読書などをして時間を潰すという手もあるけれど、小説なんてぶっ続けで読めば一冊だいたい二時間もかからない。読み終えるとやはり何もすることがなくなり次第に思考停止状態になる。涎も垂れる。その様はニルヴァーナへ近づいている様な感じもするけど、そんなに高尚なものではなくって、考えなくなるまでに考えなくても良い事、普段考えもしない事などを考えてしまい、精神衛生上かなり良くない。

例えば、今もう数時間すでに並んでいるけれど、あと少しのところででっかい手みたいのが突如として空から降ってきてこれ以上前に進めなくなったらどうしよう。しかも、それはじゃんけんのチョキのような人差し指と中指をたてて他を折り畳んだ形状で、その部分が地面に突き刺さった状態で屹立しその空いた真ん中しか通る事が出来なくて、その指の内側は鋭利な刃物になっていて不定期に閉まる。とかだったらどうしようとか、あ、あ、あ、なんか急に思い出したけど、中学一年生の時になんか知らないけど僕に優しくしてくれる隣の席の女の子が、この人どこまで優しくしてくれるんだろうと思って、消しゴム落としたら拾ってくれるし、シャーペン落としても拾ってくれるし、消しゴムとシャーペン同時に落としても拾ってくれるから、筆箱の中身目の前で全部散らばらせて床に落としても拾ってくれるのかな?と純粋な好奇心で残酷なことしてみたら拾ってくれたけど、無言で、それ以降優しくしてくれなくなったなあ、とか急に思い出してしまったぞ、なんでなんで、とりあえず一旦水を飲んで落ち着くか、でも僕がもってきた水は炭酸水で、ボトルキャップを捻るとプッシュウウと音が鳴り周囲の注意を引き付けてしまった。囮になったような気分になる。プッシュウウ爽やか炭酸boyに皆が惹き付けられたその隙に某国のスパイは逃げ出して、機密を祖国に持ち帰るのである。というか、先程から目の前のカップル、推定まだカップルではない20代前半の男女は、男の面白くない冗句に女が玉を転がすようによく笑う。偉い。つうか全然面白くないのにそんなに笑うってことは、実は滅茶苦茶おもしろいんじゃないかと男の冗句に聞き耳を立てると、なんだか次第に面白い気がしてきて、一回気づかれるくらいの声の大きさで笑ってみると、裏切られた信じられませんみたいな視線を寄越した後こしょこしょ話になってしまった。もっと彼の軽快なtalkを楽しみたかったのに残念だ。二列で並んでいたのだけれど、僕の横にいる大量のバッタを煮詰めたみたいな色のジャンパーを着たおじさんはイヤーフォンを装着し音楽鑑賞を楽しんでいる。チンチキチンチンチ、チチンチチンキと少し音が漏れてくるのだけれど、どう考えても小梅太夫さんのあのイントロにしか聞こえず、そんなサイコ野郎が隣に並んでると思うと不安である。あとやっぱ長時間リュックサックを背負っていると、大した重みじゃなくても肩が凝るというか、バキバキになって、前掛けにして妊婦さんstyleにしても長時間やってると今度は背中の筋肉がツルツルツルツル。交互に繰り返し、その間隔は短くなっていくんだけれども痛みの感覚は鋭利なっていって僕の気力を削ぎ落とす。

というか、随分前からもう自分でも何を言ってるかわからない状態かわからないけど状態のわからない状態な状態なんだけど、あとどれくらい並べばいいか目安でいいから教えて欲しかったその時の僕は。結果そこから体感で3倍くらい並んだので、果ての状態、僕がどんな感じだったかは言わないのが良いでしょう。


並んだ結果、大満足でした。散財したけど。大満足でした。それが昼の話。夜の本番も大満足でした。ジャージなんか着て旗振り乱しました。嗚呼、格好良かったナア。

 

 

たまには行列に並んで精神修行をするのもオツですね。大人の嗜みである。