八戸探訪日記。完~帰路~

朝、やはり俺が一番最初に目が覚めるともう外は晴れていた。調べてみると台風は予想された進路から外れ既に太平洋沖にいるとのこと。ホッと胸を撫で下ろし風呂に入り、出てくると、高畑君が起きていて帰り支度をしていた。さすが出来る男は違う。


このあと皆帰り支度をして、昼飯を食べて帰るのだけれど、どう帰るかを決めなければならない。


というのも、行きは長谷川さんと葵ちゃんが居なかったけど帰りはいる。
行きの車は四人で来た。10時間。腰痛持ちの俺には正直地獄だった。辛かった。
車には最高5人で乗れるけど、それはそれはギチギチで、そっから10時間なんてとてもじゃないが俺は耐えられない!
それに午前中に、午後には新幹線が動くという情報を得ていたので、僕は「じゃあ僕は、もう少し皆といたいけど新幹線で帰ります」と一抜け。
みんなはギチギチの車で帰っていった。こんな疲れた状態で、盛り上げる為に寝れずに、10時間!?ハハハ!地獄を見ろ!ざまあ!自ずから外れクジ引いてやんの!だからアイツらはアホなんだ!と高笑いしながら僕は颯爽とバスで八戸駅へ。


駅につき改札に向かうと、やはり人が屯していて、みどりの窓口に行列が出来ていた。
そこに並ぶこと30分。僕の番になり、東京まで帰りたいんですけど、と言うと窓口の女性が、何だコイツみたいな視線を寄越し「販売してません」と言った。しばらく状況が掴めずに、丁寧に聞いてみると、なんとッ!!

午後から東北新幹線は動く予定だったのだけれど、途中、土砂崩れで線路の上に大きな岩が被さっているのを発見。鋭意撤去作業中だけど、再開の目処は全くたっていない。とのこと。もしかしたら本日中の運転もないかもしれないと言われ絶望。そう、外れクジはこっちだった!!


失意のどん底に思考停止。
わ、しかもスマホの充電が切れそう。
一旦、どっかに座りたいそしてスマホを充電したいと思い、駅の外に出ると喫茶があったので入る。


アイスコーヒーを飲んで一息つくと、妙案が浮かんだ。一個下の後輩で普段から親交のあるケイダッシュステージのお笑いコンビ『ねじ』が、現在地元である秋田に2ヶ月住んで色々とやっているのを思い出した。
彼らの家に泊めてもらえないか。つか、ついでに秋田でも遊んで帰ろうか。
すぐにやらないといけない仕事があるにはあるけど、それは台本を送ればいいだけで秋田でも出来る。コンビでの仕事は火曜日にあるからそれまでに帰れば…。と思い連絡をすると、秋田駅まで来てくれれば迎えに来てくれるという。ヨッシャ!!決まりだ!と思いルンルンでルートを調べると、は?
秋田駅まで4~5時間くらいかかる。なんだそれ?
え、秋田って青森の下だよ、ね?え?ワケわかんない。しかも電車賃も凄く高い。は?何で隣の県いくのに6000円くらいかかるのよ。パニックである。神奈川県から東京飛ばして埼玉県まで行っても1000円かからねえぞ。
連絡とった手前、上記の理由で断るのは何だか格好悪い。しかし、何とそっちの路線も完全に運休していて事なきを得た。秋田こええ。ねじこんな遠いところで頑張ってるんだな。偉いな。


さ、そしてこの長い八戸探訪日記その1の冒頭部分に戻るのである。

 

どうしたものか。どうしようもない。アイスコーヒーを飲みながら、することもないのでとりあえず僕はブログを書きはじめたら、こんなに長くなってしまった。


喫茶は僕と同じ様な境遇の人で犇めきあっている。
ブログを書きながらも、周りの声が聞こえてくる。

 

なんか運転再開するって!

 

なにッ!?どうでもいいブログ書きを中断し、すぐにTwitterとかで調べてみると、確かにそんなような話題が上がっている。


急いで駅に戻ると、今度は券売機の方に行列が出来ていて、すかさず並び、特急券をゲット。やったぜ!

しかし立ち席。三時間立ちっぱなし。

うーむ。車組とどっこいどっこいな気がしてきた。
しかし、僕は帰れないかもしれない危機から脱することが出来てそれだけで良かった。


色々とダイアは乱れているからもう滅茶苦茶なんだけど、とにかく17時頃に新幹線に乗り込む事が出来た。はやぶさは全席指定席で、立ち席とは連結部のトイレとかあるところの通路に立っとれダボがということらしい。
仕方ない。指定席は売り切れだったのだ。

その狭いスペースには人がぎゅうぎゅうだった。
ここで三時間立ちっぱなしかあ…これは過酷だな。
しかもその立ち席のスペースには外国の子供達がだらしなく寝転がり、ニタニタと頬を弛めていてスペースを占有。親の外国人達は何をしているかというとスマフォをいじり倒したりラテーなどを飲んだりしていて我関せず。人を気遣う想像力の射程が著しく短い空間で俺は、スマホの電源が切れそうになっている。

どっか充電出来るとこないかなあ、と思っていたら、洗面台の脇を占拠している女がいて、鞄を壁際によせ何かを隠している感じにしているけど、陰からコードがみょーんと延びていて女のいじくるスマホに刺さっているので、そこにコンセントがあるっぽい。この女コンセント占拠してやがる!マジかよ!と思いつつも、緊急の連絡かもしれないし、いくつか駅が過ぎたら降りるかも知れないし、まあいいか。と思い僕は鞄の中から小説をとり出した。


新幹線は順調に走っていたけれど、東京に近づくに連れて停車することが多くなり、結局三時間のところ五時間以上かかり東京駅に着いた時には22時半くらいだった。コンセント占拠女は結局ずっと乗りっぱなしで上野で降りた。短い間充電。


そしたらJRが遅れちゃってごめんねえ!とか言って、いくらか払い戻すよう、と言ってくれて交通費だけというか、特急分全部払い戻してくれて6000円ちょっと返ってくる神対応。これからもお世話になります。


そして丸の内線に乗って東高円寺に帰る。


実は、僕はずっと心配していた事があった。
10日、じゃなくて9日の夜に家を出る時にもしかしたら窓を開けっ放しで出て来ちゃったかもしれない、ということ。
風呂場の窓は確実に開けっ放しではある。しかし寝室はどうか…。多分閉めているんだろうけど、全く記憶にない。しかも、このツイてなさだと開けっ放しの感じもなんだか段々してきた。ヤバい。怖い。

 

家に着く。果たして、窓は閉まっていた。

勝った!!最高だ!何に勝ったのかはわからないけど、勝った!勝った感が凄い!!


僕は疲れた身体を癒やす為、風呂にお湯を溜めた。

湯船に浸かりながら、あー気持ちいいと声を漏らし、顔の汗を拭こうとタオルを手に取った。家にあったタオルだ。


タオルは生乾きの匂いがして臭かった。ギャフン!!

 

(おわり)