鳩戦争2019~春の陣~

 

鳩。


それは平和の象徴などと呼ばれ駆逐対象から巧みに逃れ、伸う伸うとその数を増やし人間社会の至るところに生息。この、人間も生きずらい現代社会での生活を、凡ての個体が我が世の春のように謳歌せしめる魔鳥なり。

ポロッポーなりクルックーなりポルポル等と可愛らしい声で鳴き、首を前後に振り振りモコモコした羽毛に包まれた体躯を愛くるしい所作で操り、寂しい老人からパンくずなどを公園など公の場で徴収。鳩は食い扶持にありつけ満足。老人も孤独を癒せて満足。しかし僕には見える。ほくそ笑む鳩が。いや、北叟笑む、と漢字で書いた方がその兇惡さが伝わるというもの。


我が家では春と秋に鳩との凄絶なる陣取り合戦が繰り広げられる。陣取りというか鳩が一方的に攻めてくる。これは当ブログ2月26日更新分『深まる謎。』にてその一端に触れた。未読の方はそちらもどうぞ。


春の訪れと共に鳩が我がベランダに巣を作ろうと強襲、奇襲を始終仕掛けてくるのである。始終は言いすぎました、朝方から午過ぎまでの午前中に小枝を咥えてやってくる。奴らは何故か午後、夕、夜間は活動が沈静するが午前中は油断が出来ない。
我が宅ではベランダに洗濯機やエアコンの室外機を設置しているが、鳩は室外機には目もくれず、必ず洗濯機の下に巣を作ろうとしてくる。奴らはまず排水溝を枝で占拠し使用不能にしようと目論む。理由はわからんが、先ずはその穴を塞ぎたがる。

 


そして、本日、春の陣の幕が切って落とされた。


唐突にズババババンと羽ばたきが聞こえ、それは異様なる近距離での音声で、そのすぐ後に鉄製の手摺にカチャカチャと魔爪が擦れる音。グバラババババババ等と魔王の如し咆哮。窓の外を見やると、小枝を咥えて手摺などに鳩がとまっていた。

窓を勢いよく開けゴルァと叫ぶと、パタタと飛んで逃げ道路一本挟んだマンションの手摺にとまり、や、何でもないんですけど、何か怒ってます?イヤイヤイヤイヤイヤあなたのベランダに住居構えるなんてトンでもない!みたいな感じで靦然としてる。これが白こく腹が立つ。因みに向かいのマンションはこちらと向かい合っている側にはベランダがなく窓には手摺のみ。向こうに逃れられると、もう手の出しようがなく、放っておくしかないのだけれど、暫くすると、また小枝を咥えてやってくるのである。奴らは本当に執拗だ。


実は今年の春の陣、我が陣営は相当に不利なのだ。


というのも、僕の住居は5階建てのビルでワンフロア2部屋の造りなのだけれど、住人のいない5階の片部屋は既に魔鳥の手により陥落した。鳥に手はねえから手羽先により陥落した。

もう片部屋には韓国人の留学生とおぼしき若い男が住んでいた。彼は強靭な精神力と亜細亜の虎の名に相応しいフィジカルでテコンドーを駆使してニダニダ言いながら鳩との闘争の日々を送っていた。頼もしい限りである。しかしつい先日、日本での修習が満了したのか、彼は引っ越して行った。5階が完全なるスラムと化すのに2日と掛からなかった。恐ろしい。

そして、4階。そこに住人はいるものの、僕の真上の住人は普通に社会人と思われるので朝家を出ていく。占拠されるのは時間の問題だったのだ。今朝、4階のベランダを出入りしているのを外から目撃。しかもちゃんと番で2羽いた。終わった。そうなるとアズスーンアズ尾を交え、悪魔を産み落とすのも今日や明日やの話である。恐ろしい。


僕は301号室に住んでいるので、このように上二階が陥落するのは心底分が悪い。何故なら彼奴等のコミュニティにより、我がマンションは楽勝の城という烙印が押されてしまい、僕の301号室も当然の様に営巣出来ると思われて鳩夫妻がひっきりなしに賃貸見学にやってくる。その度に窓を勢いよく空けてゴルァと叫ばなければいけないのである。


しかも、上階に巣を作られてしまうと、洗濯物が糞尿という爆撃により汚れてしまうのではないか?という不安が夥しく、もう清潔な鎧すら纏えず約2週間の闘いに挑まなければいけないのである。


いくら歴戦の武士(もののふ)と崇め奉られる僕でも、流石に管理会社に電話しようかと思う。


管理会社などというものは、云わば作戦総本部というか本丸である。
それぞれの住居などは前哨基地に他ならない。我が前哨基地は蚕糸の森公園に近いことから、この鳩との陣取り合戦において最前線なのである。この戦線を放棄することは許されない。僕が音を上げ、撤退となれば、それすなわち人類の敗亡を意味する。


そして意を決し、僕は今後の方策を乞う為、本丸に電話をかけた。


中々繋がらない。
本丸もこの時期は数多ある前哨基地からの応援要請にてんやわんや、その余りの問い合わせに忙殺。ひとつづつ対策を練るも、怒濤の鳩の軍勢に周章狼狽、闘える者は各自、現状を打破、敵を撃破、艱難を突破しなければいけないのかもしれない。


僕は武士だ。ウォリアーだ。春の陣、秋の陣、挫けそうになったこともあったけれどもう3年も持ちこたえてきた。ヨシ。覚悟を決めろ。僕はお湯を沸かした。次来たらぶっかけてやるッ!!漆黒の焔が心に灯る。


その時、本丸と電話が繋がった。


「あ、申し申し!軍師よッ!こちら最前線の吉本、純之進実彦の尊である。指示をくれい!」
「…く、るる…ほー…」
「あ、何か電波が悪く、聞き取れませぬ。もう一度!」
「クルックーッッ…ポルポル…ポロッポーッ!ポルポルポルポルポルポルポルポルゥゥゥゥウウウウーッッッ!!」
「なッ!?」

 

 

 

 

本丸は堕ちた…。

 

 

 

 

絶望と孤独の果てに、更なる激しい闘いが、今、はじまる。

 

 

 

 

 

 

【ダイエット18日め】

 

 

体重…77.8㎏
体脂肪率…25.8%

 


プールで減ったからとすぐに調子こいて甘いお菓子なぞ、菓子パンなぞ食ってしまった。反省。

 

 

あと、3月18日は誕生日でした。35歳になりました。今年は軽率に生きるをスローガンに掲げ、日々暮らしていく。と決めた。よろしくお願いしますッ!