格好悪いを止められねぇんだわ

今日はただの日記シリーズ。なので長いよ。あと思う事が多かったので冗長な文章となり果てたので、本日のニュアンスはタイトルに収斂したので、ここで読了でも。暇を使ってくださる奇特な方は最後までしばしお付き合いを。

 


本日3月19日は午前中に寝不足ながらも鳩と闘い少しウトウトしてから風呂に入るなどしていたら、まあ、そんなに急ぐ用事ではないのだけれど、僕は用事に少し遅れてしまいそうになり急いでいた。


丸ノ内線から小田急線へと電車を乗り換える為、新宿駅構内を足早にスススと進んでいたら、脇から「エクスキューズミー」と声をかけられた。

僕は立ち止まった。
もしこれが日本語で「すいません」とかだったら急いでいたので、聞こえないフリをしてそのまま立ち去っていただろう。しかし英語で話しかけられたら立ち止まるしかない。何故ならば。

僕には、日本に来た外国人が母国に帰った時、日本人は親切だったよ、優しかったよ、また日本に行きたいな、素晴らしい滞在だった、日本に恋した、Uも人生で一度は日本に行った方がいいよ、などと褒められたい。喧伝されたい。という謎の使命感というか、虚栄心がある。

勝手に日本代表みたいな面をしているのである。
まあ、それは悪いことではないでしょう。なので僕は常日頃から道端で外国人に声をかけられたら必ず立ち止まり話を聞くことにしている。
まあ、それは大体が道案内なので、僕は英語が喋れないから身振り手振りを交え日本語で説明したり、案内板があるところを日本語で教えたり、時には目的地が近く時間がある場合には日本語で会話しつつ付いていって案内したりと、そういった事をしている。堂々と日本語を喋ると意外と伝わる。
なんでその優しさを日本人に発揮出来ないのか?貴様は売国奴か?と拡声器を持って抗議してくる方がいるかもしれないので一応自ら弁護しておくと、僕は坂の前で立ち尽くす車イスの方をそっと坂の上まで押して何も語らず去るようなジェントゥゥゥメンである。
あ、立ってないから座り尽くすか。ま、それはどうでも良いとして。

なので今日も脇から「エクスキューズミー」と声をかけられた時、外国人の方が道に迷ったのだな、と思った。
何しろ一日あたりの乗降客数が世界最大のメガターミナル、新宿である。
外国から来たらもう道に迷って半泣き。巨大迷路に紛れ込んでこのまま生を終えると絶望。そんな状態でも過言ではないのだ。
そんな時に異国の人に優しく道案内されてみろ、もし俺がその立場だったら母国に帰った暁には友人に、日本人は親切だったよ、優しかったよ、また日本に行きたいな、素晴らしい滞在だった、日本に恋した、Uも人生で一度は日本に行った方がいいよ、等と誉めそやし、喧伝することうけあいである。

振り返ると、そこには東南アジア系の褐色の男性が立っていて、手に何やらプリントを持っている。はいはい、あなたはどこに行きたいのかナーとそのプリントを見やると、それは地図ではなくて、枯草が茂る野原で半裸の痩せ細った子供達が数人屯し、カメラを向けられて純粋で無垢な笑顔をこちらに向けている故に痛々しいというか、空には猛禽類が飛び子供達が肉になるのを待っているみたいな写真。そしてその下に明朝体で『恵まれないアジアの子供達に少しでもあなたの慈悲を』みたいな事が書いてあり、褐色の男性は片言の日本語で「アナタチョットオカネクダサイ」みたいな事をほざいている。

その段に至り褐色の男の顔を見ると丸々としていて、目には精気が宿っていて、宿りまくっていて、それは正義や義憤などからくる奉仕の心に燃えている精気ではなく、少しでも阿呆な日本人から楽して金を掠め取ってやろう、そしてその金で今夜は牛丼についてくる味噌汁を豚汁にしてやろう。みたいな浅ましき下劣な欲望に忠実な利己的な精気で、そもそも地下で募金を募るな。しかも単体で。

僕は立ち止まった事を後悔し、ノンと手を振り立ち去ろうとした。その瞬間、褐色の男はオーノー、ユーもダメナノーみたいな事をぶつぶつと言い、信じられない。なんて冷たい人間だ。吝嗇家め。冷たい文明の豚、いや猿。みたいな目で睨み付けてきた。


は?
まあ、こんな奴はただの詐欺というかそんな者に違いはないのだけれど、万が一本当に募金を募っているてしても、断られてそんな目をしたら駄目だろ。本当に憐憫の気持ちがあるなら、直ぐ様この男はアルバイトをして日本円を稼ぎ、せっせと送金すればよい。何を平日の昼間から少し温かい地下で募金を募っておるのだ。
僕は、とっても厭な気分になる罵倒を日本から立ち退きたくなる程その褐色の男に浴びせかけたかったけれど、時間がないので先を急いだ。東南アジア系の見た目のくせに最後に何て言ってるかわからないけど俺に中国語みたいな言語で何か言った。まあ罵倒されたのだろう。ムギギ

 

 

さ、先を急いだ良いけれど、そんな事に苛々し注意力が散漫していたのか、降りる駅を通りすぎて遅刻が確定。


駅につき、商店街を進むと、何やら美味そうな匂いというか、美味そうな店が建ち並ぶいい感じの商店街を足早にスススと進んでいた。
駅前は繁華な感じも商店街を進んでいくと、段々と寂しくなっていき、住宅も古く、昭和というか、そういったのすたるじいを感じさせる風景になってくる。
何だか懐かしい風景だなあと僕が思ったところ、後ろから未就学男児の「段々と懐かしい感じになってきたね」と声が聞こえた。
チラと見やると、やはり未就学児くらいの男児が僕よりも若そうなスラとした母親に話かけていた。母親はそうだねえとか言っている。
オホー、僕の心の声が漏れたか、それとも皆がのすたるじいを感じる風景なのか、否、それしても年端のいかない男児が「懐かしい」だと。イヤイヤイヤイヤイヤお前昭和生きてねえだろ。なんなら21世紀産まれどころか、2010以降に産まれてるだろ。何が懐かしいとか大人ぶった気障ったらしい口聞いてンだあ餓鬼ッ。とそこまでは思わないけれど、でもだってそうでしょう?しかも矢鱈と利発そうな顔つきと声色で、何もかも知っているみたいな感じで言うもんだから僕は疑問を呈してしまうだけで、小癪という言葉がぴったりとくる感じというか。

それか、もしかしたら、昔はここら辺に住んでいて、今は引っ越してしまい、久々にこの辺を歩いて、そういう意味での「懐かしい」なのかもしれない。しかし、母親は別段のすたるじいを感じている素振りもなくスタタンと歩いている。

親子のそのギャップがなんだか不気味で、両人とも顔面の造形や体躯も均整で優れているからこそ何だか不気味だった。

 

そんな不気味な親子を振り払い目的地に到着。

本日の用事は、今年の初めに結婚したアイデンティティの田島の結婚おめでとうの会を仲間内でやることで、懇意の作家さんの宅で行われた。式はまだ先だし、先にちょっと祝っとこうという感じ。
僕は、かつて太田プロ最弱派閥と呼ばれていた山山会という会に所属していた。メンバーがお笑いをやめてしまったり、地方での仕事に力を入れたり、事務所ライブでもあまり会わなくなってしまって、今ではその会は立ち消えてしまったけれど、メンバーは大して変わらずたまにこうして集まって酒などを飲む。
何となく既に集まっているメンバーで酒を飲み始めていたら、田島が「ちょっと駅まで迎えに行ってきます」と言って出ていった。
どうやら駅に仕事終わりの奥さんが着いたらしく、駅から徒歩10分強の場所なので迎えに行ったのだ。ついでにブラックパイナーSOSの山野さんも着いたらしいので、一緒に来る感じだった。

田島の奥さんが来るまでにも他の方がぞくぞくと集い、往復で20分くらいなのに、田島達一行は一時間後くらいに到着した。道に迷ってもそんなにかからないだろうが、まあ、こんなに時間がかかった理由は後で察すのでまた後で説明する。


会自体は和やかに賑やかに進行し楽しかった。田島と田島の奥さんによる相手の好きなところを10個言い合うところなんて感動したものです。ジーンとした。好きなところを10個言い合うとかいう中学生みたいな事してるのにジーンとしたよ俺は。

ふたりが別れそうになってた時期とか、遠恋の時期、結婚したくて覚悟を見せる為にお金貯めることにしました!と宣言して、それはまだ田島が売れる前のお話なので、半年くらい経っていくら貯まった?と聞いたらその時は実家住まいだったくせに10万くらいしか貯まってなくて、吉本さん、僕、金貯める為にロト6本気で始めたんですよ、と言い出した時はもう馬鹿すぎて笑ったし芸人らしいなあと思っていたけれど、まあ別れるというかフラレるだろうと思っていた。
その後、もうお笑いをやめる…みたいな時期も乗り越え、野沢雅子でブレイク、今やスターへの階段を踏み出して、ずっと反対されていた相手の親も承諾、結婚と相成った訳だけれど、それはそれは感動するし、良かったねえとホント思うし、もう興味が失せる程幸せになって欲しいナッと心の底から思う。奥さんも綺麗でいい娘だし。嗚呼、結婚してえ。

 

ま、僕は全然売れてないにも関わらずお笑いを続けていて、それだけでは生活が立ち行かなくなるので、深夜にコンビニエンスストアーでアルバイトをして糊口をしのいでいる。


本日も深夜のアルバイトがあり、会の途中ではあるものの充分感動したしお暇しようとしたら、なんと去る3月18日は僕の35歳の誕生日だったので、ろうそくに火が灯ったケーキが運ばれて、ふぅと吹き消し去ろうとしたら、実はプレゼントがあるよーと山野さんが靴下をくれた。ちゃんと洒落ている靴下で有り難かった。そしたら田島もプレゼントありますー、つって何か信じられないくらいダサいジャージ渡してきて、しかもサイズも非常にヒュージでLL。ズボン穿いてみたら現行肥満体である僕がもう一人入るくらいにウエストに余剰があり、紐で結んでもずり落ちそうだ。どんだけデブだと思ってンだよと言うとケタケタ笑い馬鹿にしてくる。
そこで、あ!奥さん迎えに行って中々帰って来なかった理由はこれかッ!と思いあたる。きっと一緒に合流した山野さんに「プレゼント持ってきた?」とか言われ持ってきてなかったから急遽駅前で買ったのだ。だから割りと衣類に大して変わらずハイセンスな田島が、中年のチンピラでも着ないようなジャージーを買ったのだ。むむむ、ま、でもプレゼントくれるだけで有難い。昨日、ライブ一緒だったけど、で、今日俺来るって分かってたけど、急遽ダサダサジャージーを買ってくれて有り難うー!

 

と、酔った頭で思っていた。このあとバイトあるから30分前から酒は飲まないようにしてたから大丈夫かな?と思っていたけど、立ったら思ってたより酔ってて駅まで少し距離あるから醒めると思ってたら、なんかもうすんごい眠くなってきて、電車で移動中に寝ようと思ってたら、短いスパンでの乗り換えがいくつかあって無理で、え、こんな状態で今からバイトすんの俺?めちゃくちゃ偉くない?バイトちゃんと行くだけで偉い。35歳の俺はひと味違うねッ!自分を褒めてあげたい。見上げた魂だ!ヨッ!

 

バイト先につき、胡乱な目付きでレジ業務を行っていると

「お、え?吉本?」
「あ、えーまさかつー??」

高校の時の友達であった。かなり親密だった。実はまさかつが店に入ってきた時に俺が「さーせー(いらっしゃいませー)」とチラと見た時、まさかつみたいな奴いんなとは思った。しかしまさかつがこんなとこにいる訳がなく、なぜなら上海にいるはずで、彼は結婚式場で働いていて、その上海支部を仕切ってる訳で「俺が右向けって言って右向かない奴には辞めてもらってる」とかいうパワーに満ち溢れた名言を放つ友人である。中国人を従えるにはこれくらい気骨がなければ無理なのだろう。
まさかつに似たような奴がいても、俺酔ってっし他人の空似だろと思って、あ、今日田島夫妻を見てて結婚への憧憬が俺の記憶の中からそれに近いところにいるまさかつを想起させ見間違わせているんだなあ、と薄ボンヤリと思ったが、果たして本人であった。


「あれ?今、日本いんの?」
「あー出張で。ホテルすぐそこで」
「あ、そうなんだ。541円です。」
「あ、うん。はい」
「えー、とうん、あ、はい丁度」
「大丈夫か?」
「え?」
「いや、なんか」
「あ、ちょっと酔ってンの俺、酔ってンのよ俺」
「お、おう」
「いつまでこっち(日本)いんの?」
「あー明後日。今回すぐ帰っちゃうんだわ」
「あ、残念。またー」
「うん。じゃ」
「ありがとうございましたー」

 


言うぞ。俺はねえもう言う。ハッキリと心の内を曝すぞ。俺はねえ、もうねえ、恥ずかしかったッッ!!恥ずかしかったよ俺は。酔ってんだもん。や、や、や、まさかつとは去年の10月に飲んだ。だから酔ってるのが恥ずかしいんじゃない。その様。35歳でコンビニでアルバイトしている不良店員である。もう中国が長いまさかつにしたらアイヤーである。否、アイヤーでアル。いいスーツを着ていた。俺は薄汚れたユニフォーム。ビシッと髪も撫で付けて、1日の終わりにこれからホテルに帰り少しアルコールを飲むのだろう。そこでふらっと寄ったコンビニで同窓が酔いながらアルバイトをしている。

恥辱で爆発してしまい周囲に散らばった僕の顔面だったものを広い集めるのに、少し手間取ったくらいだ。

俺は、友達に気を使わせてしまったのだ。

最初の「あ、え?吉本?」が、もう気を使っていた。俺はねえ悲しいよ。久しぶりに日本帰ってきて、仕事してホテルで寝る前に少しテレビをつけたら、そこに同窓が。これこそが正しい再会だろ。なにしてんだよ俺。

酔っぱって、え、こんな状態で今からバイトすんの俺?めちゃくちゃ偉くない?バイトちゃんと行くだけで偉い。自分を褒めてあげたい。35歳の俺はひと味違うねッ!見上げた魂だ!ヨッ!と思ってた時の俺の頭蓋骨を粉砕したい。然る後唾を吐きかけ踏みにじりたい。


友達にそんな姿を見られたのが恥ずかしいんじゃない。友達にそんな姿を見せてしまった事が恥ずかしいんじゃ。見たくなかったのよそんな吉本純は。まさかつは。それがあの気弱な「あ、え?吉本?」なのだよ。


こんな弱気な事ばかり言ってたら、弱さを売りにしてると三島由紀夫信者に馬鹿にされそうなので、もう復習だな。俺に。自分に。

気を使って友達出来るかよ。お前に気を使わせないようになってやる。待ってろ。そこでふとあの東南アジア系の褐色の男に最後に言われた言葉を思い出す。何て言われたか何て言葉だったか忘れたけれど、鏡に向かって思いっきりその言葉を叫びたかった。

 

でもバイト中なのでやめた。

 

【ダイエット19日め】


体重77.4㎏
体脂肪率26.1%