八戸探訪日記。その2~復活のJ~

さて「はっち」とは何なのか。僕の見解により一言でまとめると、それは街の観光案内所のもっと凄いやつ。である。
コンクリートむき出しの5階建てのモッダーンな施設の中にはイベントスペースやカフェー、劇場がいくつか、現地の学生達が試験勉強など出来る図書館の学習室みたいなスペースや子供が遊べるアスレチック的なフロア。伝統品や八戸の歴史的な企業や祭りなどを展示、販売などしているフロア。さらに最上階には宿泊施設である。しかしこの宿泊施設はなんというか、部活の合宿で行くような大部屋がいくつかある感じで、他のパフォーマーの方々は相部屋だったり何だったりするのだが、CHARA DEは6人と大所帯なのでひと部屋割り振られた。


さて、リーダーである気を使える変人長谷川さんと、小生意気なパティシエ小娘葵あおいちゃんと合流し、荷物を部屋に置くと、息つく暇もなく、明日11日、12日と本番を迎える現場でコントの練習をしに行った。

 

八戸を闊歩する。や、正確には本八戸の街を闊歩する。そして思ったのは、あんまり寒くないのね~わあ道路無駄に広くて気持ちいい~地方都市感満載~である。
しかし、なんだか予想していた鉄という鉄の全てが錆びている田舎ではなくて、新しい建物が多くなんだか洒落ていて人の表情が明るい。


これから2日間、全6回のステージをする現場は『BARダンディ』というスナックのようなバーで、とても気のいい、修羅場をくぐり抜け酸いも甘いも噛みしめ人間の粋のようなおばあちゃんママのいるいい感じの店だった。
このバーで、お客さんに交じりそれぞれのコントが同時進行していきお客さんを巻き込みつつ最後にはひとつに収斂するという、何ともアドリブ性の高いコントをやるのである。


もう一度おさらいしておくとCHARA DEメンバーは、長谷川さん、根本羽衣ちゃん、葵あおいちゃん、たなしゅう、高畑君、純純の6人である。
ダンディではじめて流れや台本を確認し、サラッとやってみると前にコントをやったこともあるので息ぴったりでいい感じ。高畑君はアドリブコント集団の一味の実力を遺憾なく発揮しいい感じ。土塊の怪物ことたなしゅう以外はいい感じ。実にマッチし、数回軽く流れを合わせるだけでなんの心配もない感じになれたし、なによりそもそもあまり練習が好きじゃないし疲れていたのでサクッと切り上げることが出来て満足だった。たなしゅうだけ心配だった。意地悪とか弄りとかではなく。キビシ。


すると、運営の方からこのあと他のパフォーマーの方々も交えて飲み会があるというので参加。
そこにはドラァグクイーンの方やマジシャンやコンテンポラリーダンスを土台に一人芝居をする人、元ストリッパーで歌手やプロレスなどをやっていた運営の女性、そしてこのイベントを仕切っている今川さんという女性。この今川さんが差し入れてくれた美味い日本酒を初っ鼻から僕はグビグビ飲み、寝不足と疲れで即酩酊。みなは二件目に行くと言うが、僕は宿泊施設に帰り眠りたかった。しかし変人の長谷川さんが寝てていいから二件目来いといわれ、ついていくとそこは、屋台の様な小さい店が軒を連ね、大変賑やかで、そんな感じなのに新しめの区画なので洒落ててどこか可愛らしいみろく横丁という通りだった。外に設置されたテーブルに座ると、そこにはまた他のパフォーマーである日本人と外国人の男女からなる三人組のフランス住みのダンス集団がいて親交を深める。というか俺はもう酩酊していて座っていてもフラフラで、ブブサプレコモン等と唯一知ってるフランス語を繰り返し眠りながら椅子からずり落ちること数度。夜になるととにかく寒く、僕は気候を舐めていたのと荷物が多くなるのが嫌でTシャーツにカーディガン。ブルブル震えながら八戸ラーメンなるものを啜った記憶が辛うじてあるくらいだ。僕の横で場末のスナックのチーママがゲラゲラ笑いながら世話してくれて、大変助かった。あれ?こんな奴いたっけと思い顔をあげるとuiちゃんで、コイツ前から場末のスナックのチーママくらい目茶気が利くなあ!と思っていたけど、マジで場末のスナックのチーママくらい気が利くじゃん!!でも、そもそも俺は場末のスナックに行った事もないし知り合いに場末のスナックのチーママなんていないので、この形容詞はイキフンで勝手に使ってる訳で、それは褒め言葉としては妥当ではないので、これから場末のスナックのチーママくらい気が利くなあと思うことはやめるよう。それがいい!などと考えているといつの間にか眠っていたらしく、ガバッと起きあがると宿泊施設で自分の布団であった。


スマホを見ると、一時すぎくらいで、高畑君も眠りについていたけど、他のアホどもはコンビニで買ってきた鮭とばやさきイカなどでワインなどをやっていた。他室のパフォーマーの人もいた。

はっちの門限が24時なので僕は一時間強眠っていたらしい。しかし完全復活。YJは完全に覚醒。夜はこれからや!とワインを煽ると何だかみんなが腑抜けたような表情になり、眠い等と連呼。寝始めるものまで出る始末。他室の、やけに馴れ馴れしく俺は生理的に無理だったパフォーマーも自分の部屋に帰り、孤独。ああ、そうだった。俺はいつだって孤独だった。明日の朝、5時に起きて港の市場で美味しい海鮮を食べる事が決定し、皆は眠りについた。

この時点できっと皆は酔った上での戯れ言くらいの感じだっただろう。なにしろしっかり酔った三時間後に元気溌剌で起きる奴などいないと思っていただろう。起こすと決めたら相手に嫌われようが低血圧だろうが確実に他人を起こすYJがいることも知らずに。


(つづく)